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アフターレポート

2011年12月1日、株式会社セミナーインフォ主催による生命保険・損害保険会社のための最新情報イベント「保険フォーラム2011」が東京・千代田区のベルサール九段で開催された。このフォーラムは保険会社の経営環境の変化を的確に捉え、セミナーを通じた情報提供を行なうことを目的に年に一度開催されているもので、今回は第三回目。今年は「保険会社のイノベーション〜競争力強化の源泉と未来への挑戦〜」を統一テーマに全22に上るセッションがA、B、C、Dの4会場で並列的に行なわれたが、参加申込総数が2千4百件を超えセッション会場はいずれも満席で好評を博した。

今回のフォーラムでは、金融庁監督局保険セクター分析担当課長補佐の植村信保氏が「保険会社のリスク管理高度化に向けて」と題して基調講演、これを受けて最新の保険監督の方向性、保険会社のリスク管理とIFRS対応、保険募集を巡る法規制、保険ALM高度化とリスク管理態勢など、保険監督や保険経営の統合的リスク管理、規制など11のセッションが行なわれた。また、IT・Marketingトラックではマーケティング戦略を中心にソーシャルメディア活用や次世代サービスプラットフォーム、未来予測・分析手法など6つのセッションで取り組み事例が紹介された。さらに一部有料セミナーでは、メットライフアリコのコールセンター戦略、ライフネット生命のソーシャルメディア活用、ダイレクト損保のマーケティングと三井ダイレクトの戦略、ネクスティア生命の顧客創造戦略など各社担当者から取り組みの実態や課題が報告された。

保険フォーラム2011

金融庁による基調講演

金融庁 監督局保険セクター分析担当課長補佐 植村信保氏 当日はまず、「保険会社のリスク管理高度化に向けて〜検査・監督方針を踏まえて〜」と題して金融庁 監督局保険セクター分析担当課長補佐 植村信保氏が基調講演を行なった。

植村氏は保険会社の健全性規制の動向について、保険業法改正(1995年)以前のいわゆる「護送船団」から現在の健全性確保の枠組み−自己規律、行政による規制・監督、市場規律−に至る動向を紹介。さらに、具体的推移についてソルベンシー・マージン比率の導入(1996年)から「算出基準等に関する検討チーム」の報告書の公表(2007年度)そして、金融危機を挟んでそれまでの現行方式での比率厳格化から短期的な見直し及び経済価値ベースのソルベンシー規制導入に係わるフィールドテストの導入(2010年)と今年3月からの新ソルベンシー・マージン比率の試験的導入について説明。

短期的見直しについては、マージン算入の厳格化とリスク計測の厳格化・精緻化が図られたが、「基準への移行はスムーズに行きつつある。ただ、3月末の国内株式のリスク係数は10%から20%に上がっており、リスク係数への影響が大きかった」とした。

一方、平成23事務年度監督方針について、行政としてはリスク管理の高度化の促進を重点においており、適切なリスク管理態勢の整備、各社の特性に応じてALMが行なわれているかどうか、また、経営統合、グループ化を意識して事業・地域の多角化を重点検証していく方向とした。なお、ソルベンシー評価の見直しでは、経済価値ベースのソルベンシー規制導入に向けた検討を日本アクチュアリー会、損害保険料率算出機構を含めスタディ・ワーキンググループで行なっており、来年3月頃には一定の方向が示されるのではないか−とした。

保険会社の健全性規制の動向では、健全性確保の枠組みとして、統合的リスク管理(ERM)の全体像としてのガバナンスとリスク文化、リスク選好、管理プロセス(PDCAサイクル)といったERMの構成要素を提示。本来ERMは保険会社が自己管理の一環として行なうべきものだが、企業価値の安定的向上が契約者保護に資するという考え方から当局はERMに注目している−とし、最近の金融庁の取り組みを説明した。

保険会社のグローバル展開とリスク管理

基調講演に続き「保険会社のグローバル展開とリスク管理」と題してKPMGマネジメントコンサルティング株式会社 パートナー 中田宣昭氏が報告した。

中田氏の報告は、まずセクション1として、日本における生・損保市場と保険会社の変遷、外資系生保の台頭の推移と現状を数値的に捉え、それを踏まえたうえで、生・損保の海外進出状況(主要生保及び損保)について報告。特に、生保では最近の大手社(日本生命、第一生命、住友生命、明治安田生命)の現状、損保では会社数、出資形態などを含めて解説した。

また、セクション2では「保険業界におけるリスク管理」と題して、金融庁の考えるリスク管理のあり方(金融庁が示しているベターレギュレーションの4本柱)と取り組み、平成23事務年度保険会社向け監督方針」にみる統合的リスク管理やソルベンシーUの枠組みを説明、セクション3として銀行、証券、保険など規制金融団体の動きを説明した。

最新の保険監督の方向性と外部委託管理の着眼点

つづいて、 「最新の保険監督の方向性と外部委託管理の着眼点」 と題して、東京国際コンサルティング株式会社 代表取締役社長 齊藤治彦氏、代表取締役副社長 青木茂幸氏が報告した。

報告はマクロ環境と本邦への影響として、グローバルな金融危機のインパクトとして「システミック・リスク」への対応(監督当局間の連携)、財務健全性の重要性の高まり、リスクガバナンス、ITガバナンスの流れ等を指摘。本邦保険市場へのインプリケーションとして国際的な規制対応、グローバルな監視に耐え得るリスク管理態勢、説明責任の確保(リスク・ガバナンス)が必要とした。

このあと、当局の問題意識及び保険会社に対する「期待」について一般的な傾向を説明するとともに、平成23事務年度監督方針の特徴及び具体的な取り組みとしての平成23検査事務年度検査基本方針の姿勢、枠組み、検査重点項目、そして統合リスク管理態勢整備の要請など保険監督の方向性を示した。

また、「外部委託管理の着眼点」では、平成22検査事務年度検査基本方針で、委託先・代理店への直接検査が明記されるなど、外部委託先管理が業務管理の中核に移りつつあるとした上で検査とその限界などについても指摘した。

経済価値時代におけるリスク管理とIFRS対応

この後、「経済価値時代におけるリスク管理とIFRS対応」と題して、新日本有限責任監査法人 シニアパートナー 小澤裕治氏が経営の視点からみた統合的リスク管理と規制・IFRS対応について報告。またエグゼクティブ・ディレクター 出塚亨一氏、パートナー 近藤敏弘氏が統合的リスク管理の規制・IFRSの実務的対応で報告した。

経営の視点からみた統合的リスク管理と規制・IFRS対応では、2009年12月の保険監督指針及び2011年保険検査マニュアルの改正のポイント、リスクカテゴリーの再編、統合的リスク管理態勢についてミニマムな観点から対応課題を抽出して解説。

特に、リスクとリターンの一体性や全体的なリスク管理がどういう仕組みとなるのか、またガバナンス、コンプライアンスについての欧米を中心とした一体的管理を図示した。

この後、国際的視点を踏まえた対応課題について、保険規制、EUのソルベンシーUと最近の動向、QIS5についての総論、さらにIFRS
(保険会計制度)と日本におけるIFRS導入のロードマップと最近の動きについて報告した。

一方、実務的対応では、前記報告を踏まえ、保険会社におけるERM態勢整備の対応とその実務について管理報告の一般例、またソルベンシー規制における主要課題と実務的対応(内部モデル)を例示した。

また、報告ではIFRS対応について規制間で共通な部分と異なる部分を整理し、それぞれの実務対応について解説を行なった。

保険募集を巡る法規制

つづいて「保険募集を巡る法規制」と題してアンダーソン・毛利・友常法律事務所 パートナー弁護士 出張智己氏が報告した。

同報告は、募集チャネルの多様化とコンプライアンスについて解説したもので、改めて保険募集の概念と募集行為−締結の代理または媒介及びそれに当らない行為−を整理。募集行為について銀行を中心とした代理店チャネル、乗合代理店チャネル、ダイレクトチャネル、募集人チャネルそれぞれのチャネルにおける事例を挙げ、何が問題になるかを指摘、コンプライアンス上の勘所を説明した。 保険フォーラム2011 風景2

暴力団排除条項の約款導入に伴う態勢整備

当日のセミナーは前掲した通り、4会場で並列して行なわれたが、B会場では6つの報告が行なわれた。まず「暴力団排除条項の約款導入に伴う態勢整備」と題してアメリカンファミリー生命保険会社 法律顧問・弁護士 大野徹也氏が報告した。

大野氏は2011年6月の生命保険協会による暴力団排除条項案の導入と同条項導入の背景−不当要求の拒絶、一切の関係遮断を内部統制システムで実現−について説明。暴力団排除条項の内容についての裁判事例を基に解説。契約解除では契約者等に対する信頼を損ない保険契約の存続を困難とする重大な事由条項の確認が重要だとした。その上で「協会とりまとめ」に沿った形での帳票、募集態勢、事務態勢、外部連携態勢など個社毎の創意工夫の余地は大きいとした。

保険会社のリスク管理・コンプライアンス・競合優位性の向上

この後、「保険会社のリスク管理・コンプライアンス・競合優位性の向上」と題して、オラクルコーポレーション バイスプレジデント チャックジョンストン氏がテクノロジーの進化に伴い変化するリスクについて報告した(同時通訳)。

報告は保険業におけるテクノロジーの進化とビジネスへの適応性−スコープの拡大、国地域間における障壁の除去、ビジネスにおける変革とリスク軽減―などを説明。主要なリスクと監査関連課題の例を示した。

その後、営業(募集)、契約処理、保険引受リスクなどコアシステム及び決算早期化のプロセスなどリスクマネジメントシステムの紹介、ソルベンシーUへの対応、テクノロジーによるリスク支援の内容について説明した。

IFRS金融商品会計への対応

次いで「IFRS金融商品会計への対応」で新日鉄ソリューションズ株式会社 金融ソリューション事業本部主席コンサルタント 漆沢昭光氏が報告した。

漆沢氏はまず同社の金融業務ソリューションの概要及びALM、リスク収益管理の高度化対応としてのNSSOL経営管理系ソリューションシステム導入の実績を紹介。さらに、保険業界を取巻く環境として、国際会計基準(IFRS)の動向について基準確定の見通し及び保険契約を巡る動向や金融商品会計について詳細に報告。最後に、同社が考えるERMシステム(狭義のALMからERMへ)を紹介した。

保険業界における情報セキュリティ対策の最新動向

このあと「保険業界における情報セキュリティ対策の最新動向」で、有限責任監査法人トーマツ パートナー 福島雅宏氏並びにデロイトトーマツリスクサービス株式会社 パートナー 野見山雅史氏が報告した。

保険会社をとりまく情報セキュリティ環境は大きく変化しているが、同報告ではまず環境変化について保険会社のIT利用動向(インターネットによる保険取引、クラウド・コンピューティングの活用等)と大規模・巧妙化するサイバー攻撃などセキュリティ脅威の実態を紹介。

また、事故事例として内部者や委託先権限者による情報漏洩、代理店からの情報流出、さらに金融検査指摘事例を取り上げた。

つづいて、セキュリティ対策の動向では、サイバー攻撃の手法、攻撃を行なうハッカー、高度化するコンピュターウィルスについて解説。

サイバー攻撃対策としてのログ管理(SIEM)と成功要因を明示したほか、特に代理店管理における課題事例と管理のあり方、見直しの状況を紹介した。

データバリデーション改善による効率及び収益への貢献

ついで「データバリデーション改善による効率及び収益への貢献」と題してフェア・アイザック日本支社 シニア・コンサルタント 阿部章裕氏が報告した。

報告は同社の概要及び同社が提供するソリューションを紹介したあと、データバリデーションの定義(ビジネスプロセス上で継承されるデータが正しいかどうかをチェックするここと)と分散型UIサービスの構築と展開について図示・説明した。

また、保険業界でのデータバリデーションの事例として損保会社における引受査定処理の自動化について課題(ビジネスチャレンジ)とソリューション(リアルタイムの処理)、導入効果(レガシー・システムからのリプレイスによるメンテナンス費用、運用コストの低減)、ガーディアン生命、ハートフォード生命、アクサエクイタブル生命の実例を紹介。さらにビジネスルールマネジメントシステム(ビジネスルールエンジン)についても導入とその効果を解説した。

保険ALM高度化とリスク管理態勢強化

この後、「保険ALM高度化とリスク管理態勢強化」と題してプライスウォーターハウスクーパース 金融サービス事業本部マネージャー 陀安信法氏が報告した。

陀安氏はまず欧州を中心とする生命保険会社49社のインタビューを基に、欧州保険会社がソルベンシーU導入のために取り組んでいるプロジェクトの進捗状況とそこからの教訓、整備すべき主要な要素(課題)は何かについて言及。経営層の期待、現場の期待など当初の期待と投資コスト(システム改善・インフラ対応コスト)、内部モデル(全般的なリスク状況分析と計量化とそれらリスクに対応するために必要とされるエコノミックキャピタルを決定するために構築したリスクマネジメントシステム)の導入と課題について説明した。

この後、国内保険会社を取り巻く状況について触れ「経済価値ベースの資産・負債評価」導入に向けた検討、金融庁動向とフィールドテスト結果のまとめを紹介。最後に国内でのERM態勢強化アプローチについての考察を述べた。 保険フォーラム2011 風景4

保険会社の未来戦略

以上A、B会場のセッションが保険会社のリスク管理の方向と課題を中心に、IFRS(国際会計基準)、ソルベンシーU導入に向けた対応、さらに統合的リスク管理に向けたソリューションやシステム導入などの報告がなされたのに対し、C会場のセッションでは保険会社のマーケティングを中心に6つのセッションが行なわれた。

まず、「保険会社の未来戦略」と題して日本アイ・ビー・エム株式会社 保険事業ソートリーダー 遠藤毅郎氏が報告。

遠藤氏は勝ち組保険会社が取組む3つの施策として@顧客の購買行動を科学する(十分な情報による顧客とのインタラクション)A顧客の要求に対して科学的に対応する(効率化・自動化された業務遂行)B営業活動を科学する(弾力的事業展開)を挙げた。

その上で、「顧客接点の高度化」について、代理店、来店型店舗、営業職員、コールセンター、ホームページ、比較サイト、eメール、モバイル、DMなどそれぞれの顧客・見込客の期待度の変化を図示、IBM調査をもとに各施策を説明した。

まず顧客の購買行動ではチャネルミックス対応、双方向コミュニケーション、リアルタイムとダイナミックの適切な組み合わせを作ることが必要−と指摘。各国の顧客心理タイプ(セキュリティ重視、価格重視、支援追求、支援追求派で疑い深い、品質追求、情報に通じた最適主義)分析を説明した。顧客の要求への科学的な対応では、損害調査・保険金支払査定最適化ビジネスでの顧客経験価値の重要性、営業活動では欧米保険会社の事例を挙げ、従来型経営から“予測・先取方”経営への転換が必要とした。

ソーシャルメディア時代のマーケティング

つづいてデロイトトーマツコンサルティング株式会社 シニアマネージャー 糀谷充純氏が「ソーシャルメディア時代のマーケティング」で報告。

糀谷氏はマーケティングの歴史的変遷を図示し、ソーシャルメディア時代の到来によって、マーケティングが「経験・価値共有」の時代に入ったとし、その基本的変化を「顧客との関係」「顧客との接点」「ビジネスプロセス」「組織・役割」「システム・テクノロジー」の5つの視点から従来の関係と対比して概観した。

また、ソーシャルメディアが持つ特性(あらゆる企業活動のリアクション・レスポンス、あらゆる関係者が用いることのできる媒体、適時・迅速なリアクション・レスポンス、管理統制できない自然増殖、長期的・継続的な関係構築)を説明、マーケティングへのソーシャルメディアの活用(メディアミックスの重要性、消費行動への活用機会、メディアミックスの可視化とモニタリング)と事例を紹介した。なお、ソーシャルメディアは増幅しながら広まる特性から、その脅威に対して態勢整備が重要とした。

分析を駆使した保険マーケティングの最前線

つづいて「分析を駆使した保険マーケティングの最前線」と題し、SAS Institute Japan株式会社 ビジネス開発本部CIグループ部長 高橋昌樹氏が報告。

SASのビジネスソリューション導入実績を解説したあと、分析手法を活かしたマーケティングの増加と保険会社の実例と取り組みを紹介した。報告ではソーシャルメディアのインパクトとしてアラブの春(チュニジアのジャスミン革命)や米ウォール街における経済界・政界への抗議行動においてソーシャルメディアの果たした役割を例に、人々の行動様式と関係性(政府・市民、企業・消費者、保険会社・契約者など)の変化に言及。

また、顧客理解に基づくクロスセリング戦略として顧客データの収集統合、分析とモデル構築(顧客属性や契約情報からどのくらいの確率で購入してくれるかの可能性を商品ごとのモデルとして作り上げる)さらにデータマイニングの手法を紹介。マーケティングを支援するテクノロジーとして「SASカスタマーインテリジェンス」の説明を行なった。

保険業界におけるオフショア開発モデル

この後、「保険業界におけるオフショア開発モデル」でアイゲート・パトニ セールス・マネージャー 市場昭彦氏がパッケージ活用事例について説明した。

市場氏はアイゲート・パトニ社及び保険部門サービスの概要(業界での評価、強み、保険の分野別サービス、業務プロセスの取り組みとその結果)を紹介。生命保険、損害保険、年金保険、医療保険、再保険の各分野における実績及びグローバルサービスモデル、ビジネスソリューションの提供、デリバリサービスなど、同社の差別化要因について述べた。

このあと、アウトソーシングへの道のりを、インプットベース、アウトプットベース、トランスインフォーメーションで図示、オフショアグローバルサービスとアウトソーシング移行方法を解説した。また、日本向けオフショアプロジェクト管理では、業務文化の違いや国際的評価など日本固有の問題を指摘。日本市場向けノウハウの形式化への取組みを紹介した。

ビジネスを加速する保険向け次世代サービスプラットフォームの紹介

この後、「ビジネスを加速する保険向け次世代サービスプラットフォームの紹介」と題して伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 新技術チーム長 松井透氏が報告した。

松井氏はまず保険業界におけるCTCアプローチとして、音声基盤をベースにしたコンタクトセンターソリューションの提供、保険ポートフォリオの評価へのHPCの適用、アプリケーション開発プラットフォームの取扱い開始などそれらの仕組みを図示して説明。BOP(ビジネスオペレーションプラットフォーム)とBPM(ビジネスプロセスマネジメント)の違い。

またBOPが既存システムの変更を最小限に3つの機能(データマッシュアップ、システムマッシュアップ、ルールマネジメント)で課題解決が可能とし、保険請求処理、営業チャネル、顧客セグメントにおけるBOP活用事例を示した。

営業戦略策定と実行のアライメントを実現する

最後にオラクルコーポレーション ディレクター 熊谷健彦氏が「営業戦略策定と実行のアライメントを実現する」と題して報告。

熊谷氏はまず自らの保険加入の経験を紹介するなかで、満足感と満たされていないもの(保障全体額と支出の過不足に関する検証、もしもの時の払い渋り)に言及したあと、最近の市場環境の変化を多様化するチャネル(各種ソーシャルメディア)、従来のチャネル(職域、地域、銀行)から注目されるチャネル(SNS、口コミサイトなど)、従来埋もれていたコミュニティの存在などで解説した。

このあと、取り組んでみたい幾つかの施策として、ITインフラ、営業の効率化、法制度・コンプライアンス、事業戦略、営業戦略策定のための情報解析、満足度向上、成約確度向上などを挙げ、その実現に向けたオラクルインシュアランス・ソリューションの概要と活用の具体例を詳細な画面サンプル等をもとに説明した。 保険フォーラム2011 風景7

メットライフアリコのコールセンター戦略

前記セミナー会場A,B,Cはいずれも無料セミナーとして行なわれたが、一部有料セミナーとして4つのセッションがD会場で行われた。4つのセッションはいずれも新たな挑戦を行なっているメットライフアリコ、ライフネット生命、三井ダイレクト、ネクスティア生命の4社からの報告。

まず、最初は「メットライフアリコのコールセンター戦略」で、アメリカン・ライフ・インシュアランス・カンパニー オペレーション本部顧客サービス統括部長 永倉俊幸氏が報告した。

同社は、非対面募集(通販)と対面募集(代理店、コンサルタント社員、銀行系、企業系)のマルチチャネル化を推進しているが、同社のコールセンターは各チャネルの核をなすもの。報告は、同社のセールスコールセンター及びサービスコールセンターの組織と業務概要(業務フロー概要)に加え、目指すべきものとして顧客満足度向上、スタッフのやりがいの2点から、組織戦略、業務運営戦略、人事・教育育成戦略、マネジメント戦略について報告。また、コールセンターを支えるIT、定着率98%超を実現するオペレーターの採用・育成の取り組みを紹介した。

ライフネット生命のソーシャルメディア活用

つづいて、「ライフネット生命のソーシャルメディア活用」と題して、ライフネット生命保険株式会社 マーケティング部長代行 辻靖氏が報告した。

同社は2008年5月の開業以降、急速な伸びを示し、この11月では保有契約件数が10万件を突破しているが、報告では開業から3年目までの契約の推移、平均顧客獲得費用の低減を示し、その背景としてサーチコストの低減、ソーシャルメディアの活用、KPIでのマネジメントがあるとした。とりわけ、会社認知度が低い中で、比較しやすい情報源に自ら送客、テレビコマーシャルでの認知度向上、ツイッターによる口コミやブログなどのソーシャルメディアの活用が認知度・支持度を高め売り上げが向上、その結果、生保各社の中でユニークなポジショニングを確立しつつある−と述べた。

ダイレクト損保のマーケティングと三井ダイレクトの戦略

この後「ダイレクト損保のマーケティングと三井ダイレクトの戦略」で、三井ダイレクト損害保険株式会社 事業部ゼネラルマネージャー 北尾敏明氏が報告。

ダイレクト損保は自動車保険を中心に着実な伸びを示してきており、2010年度のマーケットシェア(元受正味保険料)は5.8%となっているが、一般自動車保険に限定すれば10%程度を占めるものと見られる。北尾氏の報告は、ダイレクト損保8社の元受正味保険料の推移、保険料の増減状況に基づきその位置を確認するとともに、ダイレクト損保の登場から今日までとネット業界の動きを比較、ダイレクト損保がネット業界に2〜3年遅れてブーム化したと指摘した。

また、マーケット戦略については、テレマーケティングとWEBマーケティングの二つに分けられるとし、それぞれのマーケット、販売手法、動向を説明。さらにWEB顧客層の市場特性代理店と通販型のコスト構造比較をした。この後、三井ダイレクトのマーケット戦略(「WEB特化戦略」)を各社比較による収支で説明。現在、コスト削減競争は限界に来ており、品質競争とコミュニケーション進化への対応の時代に入った−と述べた。

ネクスティア生命保険の顧客創造戦略

最後に「ネクスティア生命保険の顧客創造戦略」と題し、ネクスティア生命保険株式会社 マーケティング・コミュニケーション部長 山本秀一氏が報告。

同社はネット専業の生保会社として業績を伸ばしている。山本氏はまず同社のマーケティングの基本構造についてIニーズ顕在化、Uネットへアクセス、V検討、W申込みの流れに沿って図示・説明した。その上で、その動線上における様々な仕掛けと次ステップへの誘導、さらにホットゾーンだけでない顧客の創造(顧客ターゲットより多くの見込み客がいる場所へ)への取り組みを紹介。

また、同社の話題づくりとファン形成の取り組み、特に同社が今年9月に開校した「パピスマ大学」(マネーの知識を基礎から学べる無料のWEB大学)の狙いや「みんなの声キャンペーン」さらにR社とタイアップした顧客創造プログラム内容について解説した。



全セッション終了後には懇親会が催され100名を超える参加者で会場が埋め尽くされた。講演者や参加者同士の意見交換が活発に行われ、保険業界にとって極めて有益な場となった。なお、次回の開催は2012年11月29日(木)に予定されている。 保険フォーラム2011 風景6
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