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アフターレポート

2013年11月28日(木)、株式会社セミナーインフォ主催により、東京・千代田区のベルサール神田で「保険フォーラム2013」が開催された。今年で5回目を迎えるこのフォーラムは、保険会社や損害保険会社、銀行・証券会社などの金融機関の方を対象に、業界を取り巻く環境変化や規制の動向、成長戦略を支えるITイノベーション等の付加価値の高い情報を提供することを目的に開かれている。

今回は「保険会社の規制対応強化とマーケティング&IT革新」を統一テーマに、全21のセッションが開かれた。まず、基調講演として金融庁監督局参事官の小野尚氏をお招きし、本年度の保険監督の重点分野と今後の展望について解説していただいた。

これを受けて4つの会場において「Legal & Regulation」(会場A)、「Risk Management」(会場B)、「IT Solution」(会場C) 、「Marketing」(会場D)といったテーマで20のセッションが行われた。参加申込数は約3千名と好評で、各セッション会場では、たくさんの受講者が熱心に講師の話に耳を傾けていた。

保険フォーラム2011

本年度の保険監督の重点分野と今後の展望

〜 金融庁 監督局 参事官 小野 尚 氏 〜
小野尚氏 当日はまず、「本年度の保険監督の重点分野と今後の展望」と題して金融庁監督局参事官 小野尚氏が基調講演を行なった。

小野氏は、最初に保険会社に求められる役割及び監督当局の取組姿勢などについて言及。規制だけで対応しようとすると、規制の歪みや過剰規制を招き、実体経済にも悪い影響を及ぼしかねないことを踏まえ、金融機関の自己規律の向上と当局の監督能力の向上を前提に、中長期的に規制コストを低減させつつ、より質の高い監督行政を目指していくと述べた。

次に、平成25事務年度の保険監督の重点分野として、@保障・補償機能の適切な発揮、Aリスク管理の高度化の促進、B顧客保護と利用者利便の向上の3点について説明。ERM(総合的リスク管理)ヒアリング等の実施により、自己資本等の状況を踏まえながら、会社の規模やリスクの特性等に応じた適切なリスク管理態勢が整備されているかを確認していくことを述べるとともに、保険契約者等の保護観点から保険商品の内容が簡素で分かりやすいものであることも重要等であることを踏まえ、商品審査の実効性確保と迅速化に取り組むことなどを述べた。

その後、先般行った「ERMヒアリングの実施とその結果概要」を紹介。リスクとソルベンシーの自己評価やERMの活用状況などの項目ごとに、良い事例や課題のある事例を具体的に紹介しながら、ERM態勢の整備に向けた取組状況と課題について説明した。

最後に、新しい保険商品・サービス及び募集ルールのあり方について言及。不妊治療に係る保険やサービス提供業者への保険金直接支払いに関する説明や、保険ショップ等の大型代理店やインターネット等の非対面販売など多様化が進む中で、保険募集の基本ルールの創設、保険募集人の体制整備義務の導入、募集規制の適用範囲の再整理や明確化、保険仲立人に関わる規制の見直しなどを行っていくことを述べた。
保険フォーラム2013 風景1

金融モニタリングの動向と経営管理上の課題

〜 有限責任監査法人トーマツ 金融インダストリーグループ ディレクター 大平 博一 氏 〜
大平博一氏 基調講演に続いて、4つのセミナー会場で各セッションが開かれた。会場Aでは「金融モニタリングの動向と経営管理上の課題」と題して、有限責任監査法人トーマツ 金融インダストリーグループ ディレクター 大平博一氏が報告した。

大平氏は、まず金融自由化以降の金融行政転換の流れについて説明。「金融モニタリング基本方針」をもとに、現行銀行法制定以降における金融自由化・効率化の流れや、金融当局及び金融機関経営陣の金融環境の変化に対する課題、金融庁における金融規制の質的向上への取組みについて解説。2012年5月の金融審議会の報告を受けて、金融庁と金融業界との対話が本格化していることを取り上げ、対話を通じて、本来あるべき金融業の実現のために、金融行政の課題や金融機関における経営課題も浮き彫りにされてきているのではないかと述べた。

また、金融モニタリング基本方針から見た当局の動向として、金融機関には、良質な金融サービスの提供や安定的な収益の確保等持続可能性の高い中長期的なビジネスモデルの構築が期待されると述べ、金融機関と金融庁が持続的な対話を続け、金融仲介機能の発揮を含む、新しく良質な金融サービスの提供によって経済成長に貢献することを志向していると説明した。

金融モニタリング基本方針の概要を確認した後、最後に、検証項目からみた経営管理上の課題について説明。経営管理態勢の整備、特に、経営管理のPDCAにおける内部監査機能の発揮や、真に顧客のためのサービス提供に取り組む人事制度など、6つのポイントについて解説した。

保険会社の反社対応 〜実務と動向〜

〜 弁護士法人中央総合法律事務所 パートナー弁護士 錦野 裕宗 氏 〜
〜 アソシエイト弁護士 大平 修司 氏 〜
錦野裕宗氏、大平修司氏 会場Aでは続いて、「保険会社の反社対応〜実務と動向〜」と題して、弁護士法人中央総合法律事務所 パートナー弁護士 錦野裕宗氏と、アソシエイト弁護士 大平修司氏が報告した。

まず、近年の反社対応の動向について説明。企業が反社会的勢力による被害防止するための政府指針や、反社対応に関する保険会社向けの総合的な監督指針を紹介し、暴排条例で禁止されている暴力団関係者に対する利益供与とはどのような行為かを解説した。

次に、保険契約の暴排条項について、重大事由解除(保険法30条)における包括条項の明確化と位置付けられており、属性用件のみであり行為用件は設けられていないことや、関係者が多く登場するため条項が複雑になり、被害者保護の観点が必要になることを指摘した。

その後、反社会的勢力に関する情報の入手法、警察からの情報提供、解除の手続きの具体的な方法などを説明。最後に、暴排条項のケース・スタディとして、反社と接触したときの基本的な対応について紹介し、毅然とした一貫した対応が重要であり、言質を取られないこと、組織的に対応することなどの注意点を上げた。また、暴排条項導入前の契約の解消や満期が近い場合の解除、家族が反社である場合、解約通知の名義、代理店契約の解約などについて事例を取り上げ、基本的な考え方からどう対応すべきかについて具体的に説明した。

保険募集を巡る法規制 〜WG報告に見る募集規制改正の方向性〜

〜 アンダーソン・毛利・友常法律事務所 パートナー弁護士 福田 直邦 氏 〜
福田直邦氏 続いて「保険募集を巡る法規制〜WG報告に見る募集規制改正の方向性〜」と題して、アンダーソン・毛利・友常法律事務所 パートナー弁護士 福田直邦氏が報告した。

福田氏は、金融審議会に設けられた「保険商品・サービスの提供等の在り方に関するワーキング・グループ」(WG)の検討項目のうち募集規制に重点を置いて、その報告に触れながら今後の制度改正の方向性を概観した。

「保険募集の基本的ルールの創設」については、意向把握義務、情報提供義務、募集文書の簡素化、広域性の適応除外、禁止行為の見直しなどの項目ごとに説明。募集文書の簡素化について、「契約概要」や「注意換気情報」は、WGの報告では当初は「最低限の情報」という主旨だったが、その後肥大化・複雑化してきたという問題意識から、生保協会や損保協会では簡素化についてのプロジェクトがスタートし、標準モデルの修正に動いていることを述べた。

「保険募集人の義務」「募集規制の適用範囲等」「保険仲立人の規制」についても解説。「保険募集人の義務」については、複数保険会社の商品の比較推奨販売を行う乗合代理店が今後も拡大する可能性から、比較推奨の質を確保する必要があるといった問題意識や、保険会社の委託を受けるという代理店の立場上、「公平・中立」は制度的に担保されていないとの問題意識をWGが持っていることを指摘した。

保険会社に係るIFRSの今後の動向 〜IFRS4号改訂公開草案「保険契約」を中心に〜

〜 新日本有限責任監査法人 金融部 シニアパートナー 小澤 裕治 氏 〜
〜 新日本有限責任監査法人 金融部 パートナー 羽柴 則央 氏 〜
〜 新日本有限責任監査法人 金融部 パートナー 山野 浩 氏 〜
小澤裕治氏、羽柴則央氏、山野浩氏 この後、「保険会社に係るIFRSの今後の動向〜IFRS4号改訂公開草案『保険契約』を中心に〜」と題して、新日本有限責任監査法人 金融部 シニアパートナー 小澤裕治氏、パートナー 羽柴則央氏、パートナー 山野浩氏が報告した。

まず小澤氏が、プロジェクトの経緯や概要、タイムラインについて説明。2010年公開草案からの5つの大幅な変更点について確認し、日本の状況も説明した。改定公開草案の導入によるインパクトについて、IFRS第9号と保険契約改定EDによるALMへの影響についても解説した。

次に、山野氏が、IASBの改定公開草案による提案について報告。同氏は、保険契約の適用範囲に触れた後、ビルディング・ブロック・アプローチ(BBA)、保険料配分アプローチ(PAA)という2つの測定モデルについて解説。BBAによる保険負債のイメージや期待将来キャッシュフロー、非保険要素の分離、ミラーリング・アプローチ、割引率の決定、契約上のサービス・マージン、保険料配分アプローチなどについて説明した。

最後に、羽柴氏が、保有再保険契約や保険収益の表示、移行アプローチについて解説。保険会社としてどのようにIFRSへの対応を進めていくべきか、その方向性について展望した。

保険会社グループの新たな金融危機管理フレームワーク 〜改正預金保険法と再生・処理計画〜

〜 森・濱田松本法律事務所 パートナー弁護士 増島 雅和 氏 〜
増島雅和氏 会場Aの最後のセッションでは、「保険会社グループの新たな金融危機管理フレームワーク〜改正預金保険法と再生・処理計画〜」と題して、森・濱田松本法律事務所 パートナー弁護士 増島雅和氏による報告が行われた。

最初に、増島氏は、グローバル金融危機後の金融危機管理レジームの歴史的背景からPost GFC金融危機管理レジームの指導理念、システム上重要な保険会社グループの特定、金融危機管理レジームに関するFSBフレームワークなどについて説明。

次に、FSBが2011年に公表したいわゆる「主要な特性(Key Attributes)」と保険会社グループへの適用について解説した。同氏は、主要行等監督指針V-2-3-6-2によるRRP策定に対する考え方を紹介した後、保険会社グループへのKey Attributesの適用のポイントとして、伝統的保険や一部の非伝統的保険(変額年金等)については、ランオフおよび契約移転によって処理されるのが大原則だが、事業モデル、ブッキングモデル、シェアードサービスの利用方法によっては上記処理によっては解決されないことがあると述べた。

その後、再建計画策定の実務について、再建計画が最低限含むべき事項を紹介。再建計画策定の実務ポイントとして、トリガーの設定、リカバリーオプションの発動とその選択に関する機関決定プロセス、実務上のリスク要因の分析などについて解説した。さらに、処理計画の累計とポイントを解説。処理計画の特徴や構成に触れた後、処理戦略の累計としてMPEアプローチ、SPEアプローチを紹介。最後に、改正預金保険法と処理計画についても説明した。

保険会社におけるERM高度化の課題

〜 ミリマン 日本における代表 吉村 雅明 氏 〜
吉村雅明氏 基調講演に続いて、会場BでもRisk Managementに関する5つのセッションが開かれた。

まず、「保険会社におけるERM高度化の課題」と題して、ミリマン 日本における代表 吉村雅明氏が報告した。

最初に、金融庁のERMヒアリングの結果概要から見た課題について、リスク選考の結果として、全社ベースのリスク量の上限をリスク許容度として設定し、積極的に取ると決めたリスクについては、厚めの資本を配賦することにより大きめのリスク許容度を設定することが志向されると述べた。

次に、理想的なリスク選考のプロセスについて解説。リスク許容度について、リスク選考と事業活動のドライバーを結びつけるモデルについて説明した。その後、エマージングリスク、オペレーショナル・リスク等計量化が困難なリスクへの対応についても解説。認知構造図からBayesian Networkへ移行し、スタッフの訓練を充分行うことでオペリスクが軽減されることが可視化されると述べた。

その後、保険契約者行動の理解・金利リスクのコントロールとして、金利急騰リスクへの対応の課題について説明。プレディクティブ(予測)分析ツールの利用が米国内外の損害保険会社で一般的になっており、今後は生保でもその活用が重要になると述べた。さらに、変額年金のリスク管理の手法も紹介した後、経営情報インフラに関するリスク管理上の課題解決に役立つ、デイリー・ソルベンシー・モニタリングという手法についても紹介した。

成熟市場を勝ち抜く経営管理 〜Risk Adjusted プロセスモデルの構築〜

〜 アクセンチュア株式会社 経営コンサルティング本部 リスク管理グループ マネジング・ディレクター 山本 晋五 氏 〜
山本晋五氏 この後、「成熟市場を勝ち抜く経営管理〜Risk Adjusted プロセスモデルの構築〜」と題して、アクセンチュア株式会社 経営コンサルティング本部 リスク管理グループ マネジング・ディレクター 山本晋五氏が報告した。

山本氏は、日本の保険業界においても、企業価値・継続性最大化の観点からERM強化の体制整備が進みつつあり、2013年アクセンチュアグローバル調査から、ERMと保険期間業務の統合は経営の重要課題となっていると指摘。また、国内マーケットは成熟しており、収保ベースでの大きな成長は望めず、成熟マーケットを勝ち抜くためにも、リスク管理が担う役割は「価値創出」に変化していることを述べた。

次に、環境変化に機敏な対応ができる経営管理モデル=Risk Adjustedオペレーティングモデルが重要であると述べ、Risk Adjustedオペレーティングモデルが保険会社の競争力の強化にいかに資するかを解説した。Risk Adjustedオペレーティングモデルは、戦略策定・予算策定も巻き込んだ統一プロセスでの経営管理を実現することや、実現のための多種の課題についても説明した。

国際保険規制の最新動向とERM態勢整備 〜グループ経営管理態勢の構築に向けて〜

〜 新日本有限責任監査法人 金融部 エグゼクティブ・ディレクター 出塚 亨一 氏 〜
出塚亨一氏 続いて、「国際保険規制の最新動向とERM態勢整備〜グループ経営管理態勢の構築に向けて〜」と題して、新日本有限責任監査法人 金融部 エグゼクティブ・ディレクター 出塚亨一氏が報告した。

出塚氏は、まずERMに関する近年の国内保険規制の潮流と再建破錠処理計画(RRP)策定の動向について説明。その後、リスクとソルベンシーの自己評価(ORSA)フレームワークについて解説した。ORAS規制(IAIS)では、保険コア・プリンシプルの概要、ICP16ソルベンシー目的の統合リスク管理(ERM)、ERMフレームワークICPCで規定されているORSAについて説明した。欧州のOESA規制について、ソルベンシーU規制の概要、その3つの柱、ソルベンシーUにおけるORSA、ORSAのガイドラインの概要とポイントなどについて解説。米国のORSA規制についても紹介した。

次に、欧米・米国のほか、オーストラリア、カナダ、シンガポール、バミューダにおけるORSAに関する取組みを報告。最後に、ORSA導入・対応における課題として、ステークホルダー・マネジメント、不確実性への対応、ダウンサイドリスクとアップサイドリスク、管理プロセスの例などについて解説。北米CROサーベイをもとに、保険会社経営の影響と今後の課題を述べた。

ERMおよび金融不正対策の高度化に向けたデータ分析基盤の活用

〜 SAS Institute Japan株式会社 ソリューションコンサルティング第二本部 Risk Intelligence グループ 金 壮賢 氏〜 〜
金壮賢氏 この後、「ERMおよび金融不正対策の高度化に向けたデータ分析基盤の活用」と題して、SAS Institute Japan株式会社 ソリューションコンサルティング第二本部 Risk Intelligence グループ 金壮賢氏が報告した。

金氏は、ERMを高度化するためには、収益性を損なうリスクをとらえ、かつ新たな収入機会を創出するための意思決定を迅速かつ的確に行うことが重要だと指摘。データアナリティクスを金融リスク管理領域へ応用することにより、保険会社におけるERM高度化を実現することができると述べ、その成功事例を紹介した。

また、金融不正への対応は、保険会社におけるERMの一環として取り組むべき課題であるとして、各国における保険金等不正請求の現状を説明。データアナリティクスを不正リスク管理領域へ応用することで、ERM高度化を実現できるとして、保険会社における成功事例を紹介。既知のビジネスルール等による不正検知、外れ値・異常値等による不正検知、予測モデルによる不正検知についても解説し、FNOL業務への適用例も説明した。
保険フォーラム2013 風景2

保険代理店の点検・監査における実務上の課題

〜 有限責任監査法人トーマツ 金融インダストリーグループ マネージャー 小西 博和 氏 〜
小西博和氏 会場Bの最後のセッションは、「保険代理店の点検・監査における実務上の課題」と題して、有限責任監査法人トーマツ 金融インダストリーグループ マネージャー 小西博和氏が報告した。

同セッションでは、まず金融庁の監督・検査視点の推移から、保険会社による代理店の管理に求められる事項が多様化していることを説明。代理店のリスク管理には、3つのディフェンスライン、すなわち代理店、コンプライアンス部門等、内部監査部門で適切な役割分担を行うことで、リスクの顕在化を抑制できると述べた。また、各ディフェンスラインの機能や、内部監査のあるべき姿、代理店監査の問題点も説明した。

次に、代理店における内部管理態勢は、属性や規模により異なることを説明し、代理店に今後求められる内部管理態勢の方向性を示した。また、代理店監査の見直しのポイントについて、往査前の代理店毎のリスクの充分な洗い出し、代理店の規模や属性に応じた監査項目・監査深度の設定、監査項目のリスクに応じた監査手続の設定などをあげた。

CRE・ワークプレイス戦略と先端IT技術

〜 日本ヒューレット・パッカード株式会社 ECSビジネス開発マネージャー 彦野 修 氏 〜
〜 日本ヒューレット・パッカード株式会社 ECSセールスマネージャー 鳥海 資生 氏 〜
彦野修氏、鳥海資生氏 基調講演に続いて、会場Cでは、IT Solutionに関する5つのセッションが行われた。

まず、「CRE・ワークプレイス戦略と先端IT技術」と題して、日本ヒューレット・パッカード株式会社ECSビジネス開発マネージャー 彦野修氏と、ECSセールスマネージャー鳥海資生氏が報告した。

最初に、保険業界におけるIT活用の新潮流について概説した後、日本ヒューレット・パッカードが10年以上にわたって実施してきた「ワークスタイル改革」を紹介。同社のコーポレートリアルエステート(CRE)戦略について、世界規模で計画するワークプレイス改革をビジネス戦略と合致させ、経営的支店から不動産戦略をとらえることで、経営(事業)と不動産のポートフォリオを最適化し、人事やIT部門と共に働く環境を整備。生産性の向上を図ることで、ビジネスの成長を促進していることを述べた。

次に、新しいワークスタイルの効果と弊害について説明。保険業界においてはフロントオフィスではモバイルワーク技術が比較的有効に活用されているが、バックオフィスでは導入例が非常に少ないことを指摘。モバイルワークが、業務効率の向上やBCPへの対応、ワークライフバランス、就業人口や世代変化への対応、スペース効率・コスト効率、グローバル化への対応、法規制・追求環境・地域への配慮、コーポレートブランディングから有効であることを解説した。

一般的なモバイルワークの弊害にも触れ、モバイルワークに関する先入観の排除、働き方の意識改革が重要であることを説明。固定席ワーカーである必然性と再考のポイント、社員に提供される制度やサービス、ワークスタイルとソリューションセットについても解説した。最後にモビリティ活用のユースケースを紹介。ECS-Mobilityの主要機能をデモンストレーションで紹介した。

モビリティの活用で変える保険ビジネス 〜欧米事例の紹介〜

〜 コグニザントジャパン株式会社 金融事業部 事業部長 山崎 知弘 氏 〜
山崎知弘氏 続いて、コグニザントジャパン株式会社 金融事業部 事業部長 山崎知弘氏が、「モビリティの活用で変える保険ビジネス〜欧米事例の紹介〜」と題して報告した。

山崎氏は、まず保険業界におけるSMAC(S=ソーシャル・コンピューティング、M=モビリティ、A=アナリティクス、C=クラウド)の活用について図解して説明。欧米保険業界で発生しているモビリティによる新たなトレンドも紹介し、対応時間の短縮、顧客維持、市場浸透、モバイルワークフォースの強化など、モビリティが保険業界を動かしていることを説明した。

次に、生命保険会社のモバイルアプリをデモンストレーション。損害保険会社のモバイルアプリも紹介し、損倍保険バリューチェーンにおけるモビリティ適用分野の広さを説明した。また、コグニザントのモビリティ活用事例を紹介。損害査定機能を完備した米国大手保険会社の「Moble Adjuster」、セールスライフサイクルを短縮する「退職年金ビジュアライザー」などを取り上げた。最後に、同社の保険業界向けのモビリティプロダクトの特長を説明し、試作品のデモンストレーションも行った。

ビッグデータ時代の保険業務/サービスのリ・デザイン 〜新たな顧客価値の創造〜

〜 株式会社NTTデータ経営研究所 金融コンサルティング本部 シニアマネージャー 河原 陽一 氏 〜
河原陽一氏 この後、「ビッグデータ時代の保険業務/サービスのリ・デザイン〜新たな顧客価値の創造〜」と題して、株式会社NTTデータ経営研究所 金融コンサルティング本部 シニアマネージャー 河原陽一氏が報告した。

河原氏は、はじめに多種多量のデータ(ビッグデータ)を活用することで、異変の察知や近未来の予測などを通じ、利用者個々のニーズに即したサービスの提供や、業務運営の効率化、新産業の創出等が可能になると説明。ビッグデータへの期待が高まっていることを述べた。

次に、ビッグデータの活用事例を紹介。コマツのKOMTRAX、ウェザーニュース、トヨタビッグデータ交通情報サービス、国土交通省のハザードマップポータルのポイントについて解説。ビッグデータには、モノ・コトの正確な把握、モノ・コトの因果・相関関係の把握、モノ・コトの推移の把握(予測)ができると述べた。

その後、保険サービス・業務へビッグデータの適用について、考え方やできることを紹介。ビッグデータ活用仮説を「募集」「加入」「保全」「支払い」というプロセス別に、課題と解決例を説明した。さらに、ビッグデータの活用成熟度にも触れ、会場の参加者に成熟度のセルフチェックを行ってもらった。ビッグデータ活用のポイントについて、保険のVALUEの再定義、あるべき人材・組織についても言及した。

保険会社における金利リスク・信用リスクの計量化 〜保険負債の評価高度化に向けて〜

〜 新日鉄住金ソリューションズ株式会社 金融ソリューション事業本部 シニアマネジャー 武下 博紀 氏 〜
武下博紀氏 続いて、新日鉄住金ソリューションズ株式会社 金融ソリューション事業本部 シニアマネジャー 武下博紀氏が「保険会社における金利リスク・信用リスクの計量化〜保険負債の評価高度化に向けて〜」と題して報告した。

武下氏は、金融機関の自己資本の充実を図る観点から、特に市場リスク・信用リスクの部分を中心に解説することを説明。市場リスクについては、分散共分散法(デルタ法)、ヒストリカル法、ALM(資産負債管理)、EaRなどの各手法について論点を述べた。信用リスクについては、モンテカルロ法、解析評価法などについて論じた。また、統合リスクの手法やコピュラを用いた統合、資本配賦と統合的なリスク管理についても説明。ストレステストについても各手法の論点を述べ、最近の動向についても説明した。

最後に保険会社における検討課題として、一般的なキャッシュフロー展開について述べた後、保険負債のキャッシュフロー展開について商品毎に見ていき、統合的リスク管理に向けた、同社が考えるシステムイメージを紹介した。

ACM(先進ケース管理)による保険業務オペレーションの変革

〜 日本アイ・ビー・エム株式会社 ECMクライアント・ソリューション・プロフェッショナルズ 水越 将巳 氏 〜
水越将巳氏 会場Cの最後のセッションは、「ACM(先進ケース管理)による保険業務オペレーションの変革」と題して、日本アイ・ビー・エム株式会社 ECMクライアント・ソリューション・プロフェッショナルズ 水越将巳氏が報告した。

はじめに、保険業務の情報の中に占める非構造化情報(コンテンツ)の割合が80%であることを指摘。企業品質の維持・向上と、さらなる業務効率化の検討が必要だと述べた。6つの保険主要業務領域のうち、バックオフィス業務の新契約、契約保全、保険金・給付金支払の3つのコア業務のオペレーション改善こそ、業務効率化によるコスト削減とROI向上を実現すると説明した。

そして、バックオフィス業務に共通する課題を解決する仕組みとして、Advanced Case Management(ACM=先進ケース管理)を紹介。ACMは、従来のBPMで実現する定型業務フローの管理に加え、業務処理に必要な非構造化情報の管理やダイナミックに発生する例外や非定型業務を管理し、関連するあらゆる情報を分析し、可視化すると述べた。

その後、保険引き受け業務へのACM適用例をデモンストレーション。業務の効率化、コスト削減とROI向上の実現を具体的にイメージできるように説明した。

デジタルが保険を大きく変える 〜この時代、どうしたら保険が売れるのか〜

〜 アクセンチュア株式会社 金融サービス本部 保険業担当 マネジング・ディレクター 渡辺 宣彦 氏 〜
渡辺宣彦氏 基調講演の後、会場Dでは、Marketingについて5つのセッションが行われた。最初に、「デジタルが保険を大きく変える〜この時代、どうしたら保険が売れるのか〜」と題して、アクセンチュア株式会社 金融サービス本部 保険業担当 マネジング・ディレクター 渡辺宣彦氏が報告した。

渡辺氏は、まずSMAC(S=ソーシャル、M=モビリティ、A=アナリティックス、C=クラウド)の4つのテクノロジートレンドが、消費者の社会生活を変革していることを説明。デジタリゼーションは「十人十色の顧客関係」をダイレクトに築き、それぞれのニーズやウォンツをきめ細やかに把握できるようになると説明した。また、トップマネジメントから現場担当者まで全員の意思決定のスピードを高め、行動の質を高めること、ビジネスのリズムに自在にキャッチアップできる柔軟性をもたらし、プロアクティブで高度なセキュリティーの実現を可能にすることも述べた。

次に、デジタルが保険事業者にもたらすベネフィットについて言及。営業効率の向上とコスト削減を即座に実現できる可能性があり、見込み客獲得から案件化までのリードマネジメントプロセスを一気通観でサポートすることで、顧客に効果的にアプローチできることも指摘。契約につながる可能性の高い見込み客の獲得にもつなげられると述べた。さらに、申込みから契約における業務プロセスを電子化することで、事務作業を大幅に効率化できること、査定の大部分は自動化され、手作業の割合は10%程度まで減らせると述べた。最後に、デジタルのサービス全体イメージと特長についても説明した。

成熟マーケットにおける成長戦略

〜 有限責任監査法人トーマツ 金融インダストリーグループ マネージャー 重本 武史 氏 〜
〜 日本テラデータ株式会社 インダストリー・コンサルティング統括部 シニアコンサルタント 中岡 実 氏 〜
重本武史氏、中岡実氏 続いて、「成熟マーケットにおける成長戦略」と題して、有限責任監査法人トーマツ 金融インダストリーグループ マネージャー 重本武史氏と、日本テラデータ株式会社 インダストリー・コンサルティング統括部 シニアコンサルタント 中岡実氏が報告した。

まず重本氏が、業界トップの業績を計上する企業は、様々な課題への対応にカスタマー分析を活用していると述べ、データ主導型アプローチで利益成長を育んでいると指摘。その成長戦略をデータ活用により支える「グロースエンジン」が、多くの保険会社が抱える課題に対応すると述べた。そして、ケース・スタディとして大手保険会社を紹介。グロースエンジンが、欧州市場で50%の利益増、30%の売上増をもたらしていることを述べた。

次に、中岡氏がデータ駆動型マーケティングへの取組みについて説明。顧客期待の変化とマーケティング手法への展開、アクションベースのマーケティング活動とイベントの捉え方、顧客行動変化に対応するオムにチャネルの考え方、分析に利用するデータおよび分析手法の広がりについて解説。データ駆動型マーケティングのフレームワーク、あらゆるデータ活用のためのフレームワークについても述べ、Teradataの提唱するデータ駆動型マーケティングについて説明した。

クラウド基盤上の次世代型コンタクトセンター構築事例紹介 〜複数センターのバーチャル一体化による品質向上とコスト削減の両立〜

〜 株式会社ベルシステム24 品質管理本部 次世代コンタクトセンター推進部 部長 宮本 昌也 氏 〜
〜 株式会社ベルシステム24 CRM事業本部 コンサルティング部 部長 北岡 豪史 氏 〜
宮本昌也氏、北岡豪史氏 続いて、「クラウド基盤上の次世代型コンタクトセンター構築事例紹介〜複数センターのバーチャル一体化による品質向上とコスト削減の両立〜」と題して、株式会社ベルシステム24 品質管理本部 次世代コンタクトセンター推進部 部長 宮本昌也氏と、CRM事業本部 コンサルティング部 部長 北岡豪史氏が報告した。

はじめに、国内最大級のCRMプラットフォーム「BellCloud(R)」を紹介。クラウド基盤の上に音声システム、KPI管理システム、Workforce Management Systemの統合環境を新たに構築していることを説明し、BellCloud(R)コンタクトセンターの運用イメージや導入効果を紹介した。

次に、WFM(Workforce Management)を紹介。WFMが高いサービスレベルと高品質を両立しながら、予測された仕事量を適切なタイミングで、各々のスキルを持った適切な人材を配置し、適切に処理していく管理手法であることを説明。様々な問題を最適化し、標準化することが可能だと述べた。その後、ベル版WFM運用体制について説明。多種多様な情報を用いた精緻な予測を3ヵ月枠で実施し、最適なシフトの算出を実現、常時、入電・受電状況のモニタリングを実施し、徹底した対応品質を担保することを述べ、コマンドセンター全体フローも示した。

ビッグデータはどう保険業界を変革するのか 〜欧米先進事例の紹介〜

〜 アビームコンサルティング株式会社 金融統括事業部 ディレクター 浅野 正洋 氏 〜
浅野正洋氏 続いて、アビームコンサルティング株式会社 金融統括事業部 ディレクター 浅野正洋氏が、「ビッグデータはどう保険業界を変革するのか〜欧米先進事例の紹介〜」と題して報告した。

浅野氏は、ビッグデータの定義と活用の意義を述べた後、欧米の保険会社の事例を紹介。アメリカの大手損保会社では、大災害時にソーシャルデータの書き込みから緊急性を判断し、対応の優先付けを行うなど、SNSチャネルによる顧客対応力を強化していると説明。保険加入時査定に消費者マーケティングデータを利用している英国の事例、ソーシャルデータを活用して不正保険金請求調査を効率化している事例など、いくつかの事例を取り上げて説明した。

次に、事例から得られる示唆について説明。オープンデータを活用した保険金支払いの自動化、ビッグデータによる解約兆候顧客の把握、自動車運転傾向による保険料算定、SNSチャネルを活用した顧客対応と緊急案件の自動仕分けなどの活用が考えられることを述べた。最後に、各事例が示唆する保険業界における変革ポイントと、実行に向けた現実的なアプローチについて説明した。

現場で主導するマーケティング 〜営業所・代理店が自ら顧客視点で考え、行動するために〜

〜 株式会社ジェネックスパートナーズ パートナー 安田 雄彦 氏 〜
安田雄彦氏 会場Dの最後のセッションでは、株式会社ジェネックスパートナーズ パートナー 安田雄彦氏が、「現場で主導するマーケティング〜営業所・代理店が自ら顧客視点で考え、行動するために〜」と題して報告した。

安田氏は、営業現場におけるマーケティング手法を活用した組織的な営業生産性向上の仕組み構築の必要性と意義について説明。「ラスト1マイル(営業拠点〜顧客)」での施策の浸透度合いが勝負の分かれ目となり、営業現場の「ばらつきの底上げ」を行うことが必要だとして、営業拠点自身が考え、行動する習慣づけが重要であると述べ、「現場の方向付け」に「マーケティング」の発想を活用することが大切であると述べた。

次に、現場手動のマーケティング手法の各プロセスにおけるポイントを、PDCAのフレームを用いて解説。計画(Plan)では、現場主導で顧客情報を活かし考えるための仕組みを考え、ターゲットとする顧客の明確化と対応方針を検討が重要であると説明。実行(Do)では、顧客の「体験価値⇒感動⇒ロイヤリティ」を創出するための営業プロセスの検討がポイントであり、双方向のコミュニケーションで、顧客の保険ニーズを顕在化させることの重要性について解説。検証(Check)では、現場での提案活動を顧客視点で検証する手法の導入。改善(Action)では、現場が自ら改善点に気づき、自発的な改善を図るための仕組みが重要であると述べた。最後に、顧客と保険会社との目指すべき関係と、そのために重要なことについても説明した。
保険フォーラム2013 風景3
すべてのセッションが終了した後、懇親会を開催。多くの参加者で会場が埋め尽くされ、講演者や参加者同士で活発に意見交換する姿が見られた。なお、保険フォーラムの次回開催は2014年11月27日(木)に予定されている。
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