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アフターレポート

2015年11月26日(木)、株式会社セミナーインフォ主催により、東京・千代田区のベルサール神田で「保険フォーラム2015」が開催された。今年で7回目を迎えるこのフォーラムは、保険会社や損害保険会社の方を対象に、業界を取り巻く環境変化や規制の動向、成長戦略を支えるITイノベーション等の付加価値の高い情報を保険会社の皆様に提供することを目的に開かれている。

今回は「〜保険会社における成長戦略と規制・ITの最新動向〜」を統一テーマに、全21のセッションが開かれた。まず、基調講演として金融庁監督局審議官 古澤知之氏をお招きし、「保険監督行政の諸課題」について解説していただいた。

これを受けて4つの会場において「Regulation」(A会場)、「Marketing」(B会場)、「Risk Management」(C会場) 、「Solution」(D 会場)といったテーマで、20のセッションが行われた。参加申込者数は3,800件以上と好評で、各セッション会場では、たくさんの受講者が熱心に講師の話に耳を傾けていた。 保険フォーラム2011

保険監督行政の諸課題

金融庁 監督局 審議官 古澤 知之 氏
金融庁 監督局 審議官 古澤 知之 氏 当日はまず、「保険監督行政の諸課題」と題して、金融庁監督局審議官 古澤知之氏が基調講演を行なった。

古澤氏は、はじめに保険業をめぐる足下の動向について、保険に対するニーズの多様化やグローバルなM&Aの動きなどについて触れた後、「平成27事務年度金融行政方針」における保険監督の重点分野について説明。保険会社の経営環境やビジネスモデルが変化する中で、財務状況の的確な把握やリスク管理の高度化を図るために、中長期的な取組みとして、資産・負債の経済価値ベースによる評価・監督手法を検討することを述べた。

次に、平成27事務年度に重点的に取り組む施策について説明。経営管理の水準向上のために、取締役会等における議論や意思決定の状況等、実質的な機能発揮状況について検証していくことや、個人向け貯蓄性保険商品の提供・販売については、真に顧客のために行動しているかを検証すると共に、フィデューシャリー・デューティの徹底を図ると述べた。

また、資産運用の高度化の促進のため、経営全体としての問題認識や取り組みの状況を確認することや、改正保険業法施行に向けた対応についても説明した。

最後に、平成27事務年度金融行政方針の中で、保険会社等に関係する主な取組みとして、IT技術の進展による金融業・市場の変革に戦略的に対応することを説明。金融庁の行政の在り方にも言及し、金融機関の個々の活動を細かく規制するのではなく、金融機関の創意工夫を引き出すことにより、全体として質の高い金融サービスの実現を図っていくと述べた。
保険フォーラム2015 風景1

保険行政の動向と新たな監督指針への対応

有限責任監査法人 トーマツ FIGコンサルティング ディレクター 大平 博一 氏
有限責任監査法人 トーマツ FIGコンサルティング ディレクター 大平 博一 氏 基調講演に続いて、4つのセミナー会場で各セッションが開かれた。A会場では「保険行政の動向と新たな監督指針への対応」と題して、有限責任監査法人トーマツFIGコンサルティング ディレクター 大平博一氏が報告した。

同セッションでは、まず金融行政の中長期的な方向性を確認。マクロプルーデンス、プリンシプルベース・アプローチ、コーポレートガバナンスという3つのキーワードを示し、金融行政は、国民がより良質な金融サービスを享受できるように、金融環境の変化に対応して金融制度を整備すると共に、金融機関の自主性に基づく健全な競争を促す方向にあると述べた。

次に、金融庁のコーポレートガバナンスに関する重点施策のポイントについて解説。金融仲介機能の質の改善に向けたガバナンスの重点検証、保険会社に求められる経営管理態勢、グローバルに活動する金融機関に求められる経営管理態勢、国内で活動する金融機関に求められる経営管理態勢について注目すべきポイントをあげた。

最後に、新たな監督指針への対応として、2014年9月の金融審議会報告書や金融モニタリングレポート(2015年7月公表)の保険募集関係や、保険会社向けの総合的な監督指針の改正(2016年5月末適用予定)について解説。情報提供義務の履行体制の整備、保険募集人の基本的な体制整備、規模の大きい特定保険募集人に求められる体制整備などの対応が必要であることを述べた。

平成26年保険業法改正最終施行分〜実務対応のポイント〜

アンダーソン・毛利・友常法律事務所 弁護士 福田 直邦 氏
アンダーソン・毛利・友常法律事務所 弁護士 福田 直邦 氏 A会場では続いて、「平成26年保険業法改正最終施行分〜実務対応のポイント〜」と題して、アンダーソン・毛利・友常法律事務所 弁護士 福田直邦氏が報告した。

同セッションでは、まず平成26年保険業法改正の全体像として、改正の概要と制度改正の日程について確認した後、意向把握義務・情報提供義務の導入について解説。現行制度下の保険募集プロセスと、制度改正後の保険募集プロセスを比較し、新たに導入される情報提供義務と体制整備義務から移行した情報提供義務について説明し、適用除外についても解説した。

次に、保険募集人の体制整備義務の導入に関して、比較推奨販売規制を取り上げて説明。比較推奨販売の3類型(単純比較型・比較提案型・単純提案型)を示し、それぞれのポイントについて解説した。また、フランチャイズに関する規制については、商標や指導事業について解説。大規模代理店規制についても触れた。最後に、募集規制の適用範囲を再整理。募集関連行為の意義や募集関連行為委託者の責任、委託先管理における留意点について解説した。

保険契約IFRS(フェーズ2)の適用に向けて

新日本有限責任監査法人 金融部 シニアパートナー 小澤 裕治 氏
新日本有限責任監査法人 金融アドバイザリー部 プリンシパル 栗村 一也 氏
新日本有限責任監査法人 金融部 シニアマネージャー 小林 弘幸 氏
小澤裕治氏、栗村一也氏、小林弘幸氏 続いて、「保険契約IFRS(フェーズ2)の適用に向けて」と題して、新日本有限責任監査法人金融部シニアパートナー 小澤裕治氏、金融アドバイザリー部プリンシパル 栗村一也氏、金融部シニアマネージャー 小林弘幸氏が報告した。

はじめに、小澤氏がIFRSを巡る最近の動向とIFRS9(金融商品)及びIFRS4(保険契約)のタイムラインを示し、これらの動向を受けて、今後の対応を検討する必要があると指摘。IFRSプロジェクトの流れと再始動のポイント、優先検討項目を示し、基本方針策定の対応事例を紹介するとともに、グループ展開に関する留意点についても述べた。

次に、小林氏がIASBの最近の審議状況を報告。保険契約の測定モデルの概要、BBAとPAAの概要、BAAの当初測定と事後測定、PAAの測定やコンセプト、PAAの適用要件について説明した。

また、有配当契約の概要についても説明。ミラーリング・アプローチと変動手数料アプローチについて、どのような場合に適用されるかを解説し、損益に認識される保険投資費用について述べた。また、移行措置の重要ポイントについても説明した。

最後に、栗林氏が、IFRS導入に向けて重要なテーマとなるデータ整備のポイントについて説明。欧州におけるクライアントの声を紹介し、IFRS負債評価システムの全体感を踏まえたポイントを示した。BAAとPAAの2つのアプローチからのポイントについても説明した。

再保険クレームに必要な法律知識〜近時の判例を踏まえて、2015年英国保険法及び再保険法を解説〜

弁護士法人中央総合法律事務所 弁護士 稲田 行祐 氏
弁護士法人中央総合法律事務所 弁護士 稲田 行祐 氏 引き続いて、「再保険クレームに必要な法律知識〜近時の判例を踏まえて、2015年英国保険法及び再保険法を解説〜」と題して、弁護士法人中央総合法律事務所 弁護士 稲田行祐氏による報告が行われた。

稲田氏は、はじめに再保険契約は英国法準拠が多く、たとえ日本法準拠でも英国再保険法が参照される可能性があり、英国再保険法のうち慣行となっているものは、再保険取引における商慣習と扱われる可能性があることを述べた。

次に、2015年英国保険法の重要ポイントについて解説。公正な情報提供義務について旧法と新法を比較しながら具体例や救済方法、関連判例を紹介した。また、ワランティについても旧法と新法の定義の違いと具体例、関連判例を紹介。任意規定についても言及した。

続いて、再保険法の重要ポイントを解説。Full Reinsurance ClauseとPresumption of Back to Back Coverについて説明した後、Follow the Settlement Clauseについては、その意義や関連条項、関連判例を紹介した。また、Aggregationについての関連判例も紹介した。

近時の保険事故における悩ましい有無責判断事例〜約款解釈に関する裁判例も踏まえて〜

岩田合同法律事務所 弁護士 田子 真也 氏
岩田合同法律事務所 弁護士 吉原 朋成 氏
岩田合同法律事務所 弁護士 臼井 幸治 氏
田子真也氏、吉原朋成氏、臼井幸治氏 A会場の最後のセッションでは、「近時の保険事故における悩ましい有無責判断事例〜約款解釈に関する裁判例も踏まえて〜」と題して、岩田合同法律事務所 弁護士 田子真也氏、弁護士 吉原朋成氏、弁護士 臼井幸治氏が講演した。

はじめに、「徘徊事故〜重過失・心神喪失認定を巡る問題」を紹介。認知症を間接原因とする交通事故が外来性の要因を満たすか、重過失免責または精神障害免責が認められるかが問題点になると述べ、いくつかの判例を紹介しながら、認知症の進行状況、事故原因、事故招致状況、行為態様が認定のポイントなると述べた。

次に、「溺水死事故〜外来性要件・疾病免責認定を巡る問題」について解説。被保険者が浴室で死亡し、溺水によることが疑われる事案において、傷害保険契約に適用される約款上の「急激かつ偶然な外来の事故によって被った身体の障害」といえるか等といった問題点を紹介。「外来の事故」該当性の判断として溺水といえるか、疾病免責条項の適用可能性として意識障害の原因、既往症の有無といった点が問題になると説明した。

最後に、「特殊な発生態様の事故〜偶然性・故意免責(モラル疑義)認定を巡る問題」について解説。事故に偶然性が認められるか、当事者の主観面に関わる免責要件(故意・自殺行為、重過失)が認められるかが問題点となると述べて判例を紹介。偶然性が認められない、または、故意・自殺行為とまで認められないが重過失と認められる可能性がある場合は、免責となると述べた。

従来の「保険」の先へ〜デジタル・イノベーションが実現する保険ビジネス進化論〜

アクセンチュア株式会社 金融サービス本部 シニア・マネジャー 大喜多 雄志 氏
アクセンチュア株式会社 金融サービス本部 シニア・マネジャー 原田 英明 氏
大喜多雄志氏、原田英明氏 基調講演に続いて、B会場ではMarketingに関する5つのセッションが開かれた。まず、「従来の『保険』の先へ〜デジタル・イノベーションが実現する保険ビジネス進化論〜」と題して、アクセンチュア株式会社 金融サービス本部 シニア・マネジャー 大喜多雄志氏、金融サービス本部 シニア・マネジャー 原田英明氏が報告した。

まず、大喜多氏が、グローバルにみても保険会社の顧客の流動化が大きなトレンドになっていることを指摘。加えて、豊富な顧客接点を持つ異業種が保険ビジネスに参入しており、保険会社も自らを変革する必要があると述べた。

次に、勝ち残るための2つの方向性について、一つは保険周辺の商品・サービスをフルラインナップで提供し、顧客接点・体験を掌握することであり、もう一つは、高度なリスク管理能力をさらに磨き、保険本業で圧倒的差別化を実現することだと述べた。

続いて、原田氏が、保険会社が進化を遂げるには、最先端のデジタルテクノロジーをいかにビジネスモデルに取り込んでいくことがポイントになると説明。保険業界に影響を及ぼす、テクノロジーの芽について例を挙げて説明した。

最後に、海外の先進保険企業の事例を紹介。大きな変革に対応するためには、①変革マインドの確立、②アジャイル型の実行アプローチ、③パートナーシップのフル活用、④イノベーション推進体制の運営、⑤現行ビジネスからのトランジションという5つがカギになると述べた。

保険コミュニケーション7つのツボ〜「保険の心理」による新・広告戦略〜

株式会社アサツー ディ・ケイ ストラテジック・プランニング本部 本部長 森永 賢治 氏
森永 賢治 氏 この後、「保険コミュニケーション7つのツボ〜『保険の心理』による新・広告戦略〜」と題して、株式会社アサツー ディ・ケイ ストラテジック・プランニング本部 本部長 森永賢治氏が報告した。

森永氏は、まずバブル崩壊後の20年の生保業界の歩みとコミュニケーション変遷を紹介。「黒船来航と商品個性化」「不払い問題と構造改革」「IT革命とチャネル多角化」という3つの時代に分けて説明した後、将来的な大きな課題は、加入世帯の減少にあると述べた。

次に、こうした中で、コミュニケーションの力でどうやって魅力的に伝え、加入に至らせるかについて説明。保険に対する人々の意識と行動を分析しながら、保険コミュニケーションの7つのツボを紹介。「企業柄」「三層論」「二面脳」「面倒壁」「多数派」「時間軸」「人肌感」という“ツボ”と効果について、事例を交えながら解説した。

最後に、これからの保険コミュニケーションのヒントについて、「お金美人」が、現代の“イイ女の象徴”になる中でDaily Relationsが大切になること、また、同じ商品サービスでも、人によって価格や内容が違うBehavioral Marketingがポイントになると述べた。

商品開発がマーケット戦略をドライブする〜デジタルインシュランス時代の競争に勝てる保険商品開発のアプローチとは〜

CSCジャパン合同会社 グローバルサービス事業本部 プリセールスマネージャー 石浦 謙 氏
石浦 謙 氏 続いて、「商品開発がマーケット戦略をドライブする〜デジタルインシュランス時代の競争に勝てる保険商品開発のアプローチとは〜」と題して、CSCジャパン合同会社 グローバルサービス事業本部 プリセールスマネージャー 石浦謙氏が報告した。

石浦氏は、まず「デジタルインシュランス」とは何かから説明。すでに多くの保険会社が実装を始めていることを示し、そのキーワードは「パーソナライゼーション」と「シームレスな接続」であると述べた。

次に、デジタルエコシステムにおける保険会社のポジションについて説明。顧客に質の高いサービスを提供するには、デジタルインシュランスの対応が不可欠であり、様々なプレイヤーとのエコシステムの構築が重要になること、エコシステムにおいて先進的な「保険商品」を提供する仕組みを構築することでリーダーシップを取れると述べた。

最後に、デジタルインシュランスに必要な保険商品を開発するには、差別化された保険商品定義を素早くかつ柔軟に行うことができるモデリングツールや、商品開発部門が定義した保険商品モデルを直接サービスとして提供できる仕組み、複数のプラットフォーム(PC・Web・Mobile・その他)で動作する保険商品モデルエンジンが重要になると述べ、同社が世界150社以上に導入しているVP/MSを紹介した。

IoT時代の到来 〜損保ビジネスがデジタル化する〜

コグニザントジャパン株式会社 クライアント パートナー 山崎 知弘 氏
コグニザントジャパン株式会社 アカウント マネージャー 栗山 知丈 氏
山崎知弘氏、栗山知丈氏 この後、「IoT時代の到来〜損保ビジネスがデジタル化する〜」と題して、コグニザントジャパン株式会社 クライアントパートナー 山崎知弘氏、アカウントマネージャー 栗山知丈氏が報告した。

はじめに、IoT(Internet of Things)は、ビジネスを活性化させるとともに、保険業界にとっては損失削減の大きな可能性が広がると説明。デジタル化に活用されるCode HaloによりCodeとCodeが出会うとき、その「スパーク」から新たなビジネスモデルが生まれると述べた。自動車保険における例として、携帯端末を使って運転挙動をトラッキングすることで、実際の運転に基づく保険料請求を行っている保険会社を紹介した。

続いて、テレマティクス保険やホームセーフティ自動化など損害保険サービスへのIoT適用例を紹介。米国のトップ10の自動車保険会社のうち、6社が米国の少なくとも1州でテレマティックスプログラムを実装していることを紹介。最後に、テレマティクス保険/UBI(Usage Based Insurance:利用ベース保険)向けのデジタルビジネスプラットフォームのデモを行った。

保険業界におけるデジタル時代の顧客エンゲージメント最新動向と海外事例

SAS Institute Japan株式会社 ソリューションコンサルティング第一本部
Customer Intelligenceグループ マネージャー 内山 剛 氏
内山 剛 氏 B会場の最後のセッションは、「保険業界におけるデジタル時代の顧客エンゲージメント最新動向と海外事例」と題して、SAS Institute Japan株式会社ソリューションコンサルティング第一本部 Customer Intelligenceグループマネージャー 内山剛氏が報告した。

内山氏は最初に、顧客とマーケティングを取り巻く環境の変化の例として銀行を取り上げ、BANK3.0によりリテールバンキングが変容し、Bankingの意味が「行く場所」でなく、「何かをする」ことになったと指摘。

一方で、保険業界に起こっている変化について、テレマティックスデバイスによるモニタリングで、運転状況に応じて保険料を返還する英国の自動車保険会社、ヘルスケアデータと取得し、分析・活用することで、より低価格の保険料で保障を提供している米国の医療保険会社等を紹介。より多くの顧客が保険購入チャネルをオンラインチャネルに変更していることをデータで提示し、オンラインチャネルへの早急な強化・対応が必要だと述べた。

次に、保険におけるオムニチャネルを説明。顧客を中心に据えて、デジタルインシュラーに取り組む米国最大手の保険・金融事業グループの取組みについて解説し、最後にSASで実現する顧客エンゲージメントプラットフォームを紹介した。

先進金融機関におけるMISの動向と態勢整備のポイント

新日鉄住金ソリューションズ株式会社 金融ソリューション事業本部
コンサルティング統括センター プリンシパル 谷口 清貴 氏
谷口 清貴 氏 基調講演に続いて、C会場では、Risk Management に関する5つのセッションが行われた。まず、「先進金融機関におけるMISの動向と態勢整備のポイント」と題して、新日鉄住金ソリューションズ株式会社金融ソリューション事業本部コンサルティング統括センター プリンシパル 谷口清貴氏が報告した。

谷口氏は、G-SIBsに指定されている国内メガバンクグループのリスクデータ整備プロジェクト(BCBS239規制対応)は最終段階にきているが、海外先進金融機関では、リスク以外のデータも含めて日常の内部管理や意思決定に活用することを目的に、経営情報をタイムリーに提供するシステムMIS(Management Information System:経営情報システム)の整備が進んでいると指摘。

先進的な金融機関の事例を紹介した後、有効なMISとするには、業務プロセスに即した情報を提供することと、規制等の業務要件変化へ迅速に対応し、柔軟なアドホック分析を可能とするためのデータの持ち方とリソース確保が重要だと述べた。

次に、MISの基本要件として、コンセプトの重要性、切り口と計数、アドホック分析、DWHアーキテクチャについて説明。MIS整備へのアプローチについて、設計したモデルの拡張性と限界・制約と、業務の言葉で表現することで潜在的なユーザニーズも明確になると述べ、命名規則を標準化し、用語辞書として十分な補足説明をしておくことが結果的に作業効率アップや正確性確保につながると述べた。

最後に、MISは狭義には情報システムではあるが、有効活用のためには「態勢」全般的な視点での整備が重要であり、アドホック分析をタイムリーかつ自在に行うには、データ整備面での工夫が求められると強調した。

保険業の未来戦略2015〜行動ベース(Behavior based)が保険業を変える〜

日本アイ・ビー・エム株式会社 保険事業 ソートリーダー 遠藤 毅郎 氏
遠藤 毅郎 氏 続いて、日本アイ・ビー・エム株式会社保険事業ソートリーダー 遠藤毅郎氏が、「保険業の未来戦略2015〜行動ベース(Behavior based)が保険業を変える〜」と題して報告した。

遠藤氏は、まず保険業の未来戦略のカギを握る、IoTを中心としたキーワードを紹介。Behavior Change(行動変容)やVitality(健康であることに見返りを与える医療・健康保険や生命保険)が注目されていると述べ、WellnessやVitalityの海外の事例を紹介した。

次に、Nudge(人々を強制することなく、自然に、より望ましい行動に誘導するような仕組み/シグナル)に注目。インセンティブやリウォーズ(報酬)によって、個人の活動管理を可能にし、参加者の3割が減量に成功している米国の事例を紹介。Information Seekers(情報を求めている人)が重要な集団になると述べた。

続いて、先制医療に関する発症予防や管理サービスについて考察した後、Driving Behavior(運転挙動)に注目。優良ドライバーの多くが、保険料が下がるのなら自分の運転情報等を保険会社に出すことに吝かでないと述べた。

また、next best action(勝利への道程=勝ちパターン)とBehavior based Customer Insight(行動ベースの顧客洞察)というキーワードを紹介。nba実践のポイントや顧客の心をつかむ保険における「真実の瞬間」を示し、顧客プロファイルを理解することは、保険会社が感情的な関わりを向上させる方法で顧客に接することを可能にすると述べた。また、リーダーたちは確かな洞察(insight)で確かな顧客をねらい、全方位でのお客様像の深い理解でSingle view of the customerを実現できると述べた。

トレンドから読み解く保険業界の新しい将来像

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 保険ユニット
執行役員パートナー 青木 計憲 氏
青木 計憲 氏 この後、「トレンドから読み解く保険業界の新しい将来像」と題して、デロイトトーマツ コンサルティング合同会社保険ユニット執行役員パートナー 青木計憲氏が報告した。

青木氏は、はじめに「デジタル化の本質」とは、技術を利用することではなく、変貌した顧客価値を理解し企業価値を向上させる打ち手を講じることであると指摘。見通しが不透明な事業環境では「トレンドの本質的理解」「想定シナリオ」「戦略策定アプローチ」が競争優位性を決めると述べた。

次に、保険会社は、「バリューチェーンの分離への対処」と「“繋がる世界”での保険ビジネス」の視点でのコア・コンピタンスの確立が急務であると述べ、異業種の参入や個人のリスクのコモディティ化により、バリューチェーンの分離が起こり、保険のビジネスモデルを変えることを説明。機械が人間に代わって考える時代では、機械と人間の役割の再定義と、新しいビジネスモデルの構築が競争力に大きく影響すると述べた。

最後に、変化が加速する時代を勝ち抜くために、保険会社が取り組むべき5つの課題―トレンド察知、エコシステムの形成、ビジネスモデルの転換、グローバリゼーション、社会アジェンダを紹介した。

保険会社ERMの高度化〜ストレステストの経営活用について〜

新日本有限責任監査法人 金融アドバイザリー部 マネージング・ディレクター 出塚 亨一 氏
新日本有限責任監査法人金融アドバイザリー部 シニア・マネージャー 神崎 有吾 氏
 出塚亨一氏、神崎有吾氏 続いて、新日本有限責任監査法人金融アドバイザリー部マネージング・ディレクター 出塚亨一氏、金融アドバイザリー部シニア・マネージャー 神崎有吾氏が「保険会社ERMの高度化〜ストレステストの経営活用について〜」と題して報告した。

まず、出塚氏が保険会社ERM・ORSAに関する規制動向を報告。ERM体制整備を取り巻く環境やERMに関する保険会社規制の全体像を示し、リスクカルチャーが重視されるようになった背景やリスクガバナンスに求められる体系だったアプローチについて説明した。

次に、神崎氏が保険会社におけるストレステストに係る課題について報告。ストレステストの考え方からマクロストレスとの広がり、マクロモデルの考え方や種類、各社の弱点とマクロ経済の悪化を組み合わせるための検討事例、マクロストレステストに関する課題などについて説明した。

続いて、リスクアペタイトフレームワークについて、大手銀行による導入が引き金になり海外大手保険会社でも導入が進んでいると述べた。最後に、リカバリープランを巡る動きを紹介。債権・破綻処理計画に関するフレームワークの例を紹介し、リカバリープランに関する論点を紹介した。

保険ERMに関する規制動向と保険会社における課題

有限責任監査法人 トーマツ リスク管理戦略センター ディレクター 後藤 茂之 氏
後藤 茂之 氏 C会場の最後のセッションは、有限責任監査法人トーマツ リスク管理戦略センターディレクター 後藤茂之氏が「保険ERMに関する規制動向と保険会社における課題」と題して報告した。

同セッションでは、まず保険規制改革の動きについて、①金融危機の教訓を踏まえた規制改革(G-SIIsへの規制)、②国際展開を進めるグループ保険会社への規制(IAIGsへの規制)、③現行会計に基づく期間損益ベースの経営管理から経済価値ベースの経営管理への移行(新ソルベンシー制度の導入)の3点に集約されることを述べ、国際的な規制改革はグローバルなマクロプルーデンスの観点から強く影響を受けるようになっていると説明。国際規制論議をみるために必要な視点を紹介した。

次に、IAISにおける論点を紹介。定量面の規制の動向、考慮すべき視点、解決に向けての重要な視点について報告。定性面の規制の動向、3つのレポートから得られるメッセージについて説明した。

続いて、保険ERMの現状に触れた後、さらなるERM強化の視点として、リスクガバナンス、リスクアペタイト・フレームワークとリスク文化の浸透について説明。最後に、ERM実効性向上へのアプローチとして、ニューノーマルの本質整理、保険ERM強化の視点の再整理が重要であり、RA強化のための基礎事項の論議が必要だと述べた。

M&Aを成功に導くオペレーション変革〜変革リーダーの心得〜

プライスウォーターハウスクーパース株式会社 金融サービス事業部 ディレクター 愛場 悠介 氏
プライスウォーターハウスクーパース株式会社 金融サービス事業部 シニア・マネージャー 植田 良平 氏
愛場悠介氏、植田良平氏 基調講演の後、D会場では、Solutionについて5つのセッションが行われた。最初に、「M&Aを成功に導くオペレーション変革〜リーダーの心得〜」と題して、プライスウォーターハウスクーパース株式会社金融サービス事業部ディレクター 愛場悠介氏、金融サービス事業部シニア・マネージャー 植田良平氏が報告した。

はじめに、日本の保険会社による海外M&Aが加速しているが、M&Aの目的を達成することは、オペレーション統合を中心として必ずしも容易ではないと指摘。米系投資会社や日系メガバンクの事例を示しながら、M&A成功の実現には、DD段階からシナジーとリスクを特定した上で、その施策を確実に実行するためのモニタリングが有効だと述べた。

次に、M&A事例から見る保険業務オペレーション変革のポイントについて解説。営業・マーケティングではターゲティング戦略の明確化、統合する収益面での逆シナジーリスクの最小化の計画、営業・マーケティング手法の双方の違いを理解し、良いところを学び合うことが大切であると述べ、契約管理・事務、調達の業務領域についても同社の経験を踏まえた教訓を紹介した。

最後に、変革リーダーの心得について言及。ミドル層のリーダーシップが重要であり、変革リーダーには、自身のスタイルを理解し、その特徴に留意した上で、周囲を巻き込んで行くことが求められると述べた。

変革を成功に導くビジネス主導のTo Be業務設計

SOLIZE株式会社 Innovationsカンパニー マネージャー 方堂 毅 氏
方堂 毅 氏 続いて、「変革を成功に導くビジネス主導のTo Be業務設計」と題して、SOLIZE株式会社 Innovationsカンパニーマネージャー 方堂毅氏が報告した。

方堂氏は、今後激動する外部環境の変化に対して、迅速・柔軟に対応しうる“ビジネス主導変革”が急務となると説明。同社が、製造業でのプロセス変革・IT活用技術を基に、変革実行を支援してきたことを紹介。徹底的なプロセス分析により可視化を行い、金型製作期間を1/24に短縮した実績を示し、現状を明らかにすることで目指す姿との課題(GAP)を正しく把握できるとした。

次に、トップと現場との課題認識の違いや、目標から現場の見ている事実までを繋ぎ、構造的に課題を可視化することの重要性、業務の全体像を捉えるPPRフレームワークや、可視化の順序について説明。構造的可視化で目標から課題、要因、方策へと繋ぐ流れを説明し、目指す姿の実現に向けた課題と解決の方策について解説。生命保険事務業務における変革事例をスライドで紹介した。

最後に、ビジネス主導で変革を進めるためには、ビジネス目的と現場の事実に基づき、目指す姿を描くこと、目指す姿と現状のGAPを構造的に可視化し、課題を明確にすること、判断の根底にある価値基準から見直し、真に競争力のある新業務を設計することが大切だと述べた。

電子書面の活用による保険事務作業の効率化〜申込書や支払関連書類の電子化における成功と失敗事例〜

株式会社PFU マーケティング統括部 ドキュメントビジネス推進部 石原 眞也 氏
石原 眞也 氏 続いて、「電子書面の活用による保険事務作業の効率化〜申込書や支払関連書類の電子化における成功と失敗事例〜」と題して、株式会社PFUマーケティング統括部ドキュメントビジネス推進部 石原眞也氏が報告した。

石原氏は、まず、電子化事例からみる効果・課題について説明。新契約、保全、支払い請求、保管業務における特徴と課題に触れた後、それぞれの業務の電子化の成功事例を紹介。新契約業務における電子化では、スキャナ+ソフトOCRの構成をスキャン環境として拠点に配備、申込番号のOCR処理により帳票を自動的に仕分けし、簡易なスキャニング機能で拠点でも容易に電子化できるように工夫。

この結果、拠点スキャンによる申し込む受付処理時間が短縮され、自動帳票仕分けによるセンター側作業負荷を軽減し、申込内容の早期点検作業を実現するなどの効果を実現していると述べた。

また、支払関係書類の電子化事例の失敗例も交えて、その原因も解説した。

最後に、電子書面の活用は、保険事務作業の効率化には必須であり、プロセス改善、事務適正化、コスト削減につながることを強調した。

カスタマエクスペリエンスを作り出すコンタクトセンター
テクノロジーのトレンドと近未来

株式会社ベルシステム24ホールディングス 執行役員CIO 松田 裕弘 氏
松田 裕弘 氏 続いて、株式会社ベルシステム24ホールディングス執行役員CIO 松田裕弘氏が、「カスタマエクスペリエンスを作り出すコンタクトセンターテクノロジーのトレンドと近未来」と題して報告した。

松田氏は、最初に、ベルシステム24のサービスマップやカスタマ・エクスペリエンス・ソリューション、テクノロジーの全体像を示し、ITインフラ機能提供によるValueとBellCloud(R)サービス拡張計画やTechnologyソリューションの全体像を紹介した。

次に、Avayaを使った音声系のサービスを中核として最新機能を拡張し、先進的なサービスを提供していることを説明。音声認識テキスト化・テキストマイニングツールとレポートダッシュボード機能を活用して定型レポートを配信していることを説明した。また、音声認識技術を活用したVOCソリューションにおける感情解析LVASの仕組みを紹介。脳活動痕跡を検出し、元気、幸せ、不満、怒りなど15のパラメーターを取得し、分析できる可能性についても説明した。

また、BellCloud WebRTCソリューションでは、動画や音声、データをWeb上でやりとりできることを説明。企業のホームページ問合せからクリックし、インターネット経由でコールセンターへ接続できると述べ、デモを交えて特徴とメリットを説明した。

保険事業をコアとしたプラットフォームビジネス展開の可能性

株式会社NTTデータ経営研究所 金融コンサルティングユニット シニアマネージャー 河原 陽一 氏
河原 陽一 氏 D会場の最後のセッションでは、株式会社NTTデータ経営研究所 金融コンサルティングユニット シニアマネージャー 河原陽一氏が、「保険事業をコアとしたプラットフォームビジネス展開の可能性」と題して報告した。

河原氏は、プラットフォームについての説明からスタート。何らかの目的を達成するための標準化であり、コンポーネントの組み合わせで高機能化できることを説明した。次に、仲介型、基盤提供型といったタイプ例を示しながら、プラットフォームビジネスの事例をスライドで紹介した。

続いて、近未来のプラットフォームビジネスについて考察。生活拠点をコアとしたプラットフォームビジネス、モビリティをコアとしたプラットフォームビジネスの可能性を示し、キーワードはIoT HUB、BI(ビジネスインテグレート)、オープンプラットフォーム、APIであると述べた。

次に、保険事業をコアとしたプラットフォームビジネスの仮説を紹介。防災情報・耐損害の仕組みを製品に組み込むことや、モラルリスクや環境をより反映させた商品、デジタルコンテンツ+保険販売の可能性、契約者の個性にあった販売促進のアプローチなどの可能性を示した。

最後に、身近なIoT活用の仕組みを紹介しながら、保険に応用することが考えられるのではと述べ、リスクプラットフォームという考え方ついて説明。プラットフォームビジネスの仕掛けとして、業種の垣根は曖昧にすること、生活者起点のデザイン思考がマストであること、デジタライゼーションを追求することがポイントになると述べた。
保険フォーラム2015 風景2
保険会社に関する規制・法務からマーケティング、最新ソリューションまで、幅広い内容の全21セッションが終了し、本フォーラムは盛況の内に幕を閉じた。なお、次回「保険フォーラム2016」の開催は2016年11月25日(金)に予定されている。
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